[原野商法の幇助 ]
原野商法を行った会社へ名目上の代表取締役等を紹介して同社から報酬を得ていた不動産
業者の代表取締役に対し、原野商法の被害者が損害賠償を求めた事案において、その斡旋
行為は不法行為の幇助に当たるとして損害賠償請求の一部が認められた事例。
(東京地裁 令和元年5月29日判決 ウエストロー・ジャパン)

1 事案の概要
  被告Yは、平成13年4月から継続的に宅地建物取引を行い、平成26年9月には、不動
産の売買等を目的とする法人を設立して、代表取締役に就任した。
 Yは、平成28年9月又は10月頃、Aから宅建業者の名目上の社長候補者を紹介するよ
う依頼され、宅地建物取引に関する経験や役員等の経歴を全く有しないBに、「何もしなく
て、ただ座っているだけでいい。」、「報酬については月々5万円渡す。」など話したところ、
Bから具体的な話を聞きたい旨があり、Yは、Bの電話番号をAに伝えた。 Bは、Aから連
絡を受け、印鑑登録証明書や戸籍謄本等を交付するよう要求されたため、Aにそれらを交付
たが、仕事の具体的内容についてはAから説明されず、Bが業務を行うことはなかった。
 平成28年8月に、探偵業等を目的として設立されていた株式会社Cは、不動産の仲介及
び売買に関する業務等を目的に追加し、同年12月に宅地建物取引業の免許を受けた。平成
29年 1月、Bが代表取締役に就任し、同法人は株式会社Dに商号変更した。
 原告Xは、平成29年4月、そのDから土地1、土地2を代金790万円で買う旨の売買
契約を締結するとともに、Dに対し土地3を530万円で売却する旨の売買契約を締結し、
Xは、2つの売買契約における売買代金の差額である 260万円をDに支払った。
 平成29年1月頃から、消費生活センターに対し、Dとの取引等について多数の相談が寄
せられるようになり、その後、D及びその関係者を被告とする訴訟が多数提起されるに至
ったが、XもDらを被告として提起した損害賠償等請求事件で、Xの請求を一部認容する
旨の判決が言い渡された。
 Xは、Yが、Dとの共同不法行為責任を負い、仮に共同不法行為を行ったとはいえないと
しても、Yの行為は少なくとも幇助に当たるとして、支払った260万円の他、慰謝料や弁護
費用等の支払いを求め、訴訟を提起した。 
2 判決の要旨
 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を一部認容した。
(共同不法行為ないし幇助の成否について)
 認定事実によれば、Dは、不動産の売買代金等の名目で、Xから金員を詐取する目的で、
虚偽の事実を述べ、Xに誤信させる等により、合計260万円を詐取したものと認めるのが
相当であり、Dの行為はXに対する不法行為に当たる。
 Xは、YがDと共同して不法行為を行った旨を主張するが、DとYの具体的な共同の内
容は明らかでなく、YがDに名目上の代表取締役を斡旋したことや、Xに対する不法行為
後に、Yが代表取締役に報酬を支払うなどをしていたことをもって、直ちにYがDと共同
して不法行為を行ったということはできない。また名目上の宅地建物取引士を斡旋したこ
とを認めるに足りる的確な証拠はなく、YがDと共同してXに対して民法719条1項にい
う共同不法行為を行ったと認めるに足りる証拠はない。
 一方で、宅地建物取引業法では、宅建業者には役員の人的要件を含む免許制が設けられて
いるにもかかわらず、敢えて法人である宅建業者の代表取締役に名目上の代表取締役を就
任させることは、宅地建物取引業法が役員について人的な欠格要件を含む免許制を設けた
趣旨を潜脱するものであるのみならず、そのような名目上の代表取締役が就任した宅建業
者による違法な不動産取引を招来し、購入者の利益を害する危険を有する行為であるとい
わざるを得ない。そして、名目上の代表取締役を求める宅建業者に対してそれを斡旋するこ
とは、同宅建業者による違法な不動産取引等を容易にするものであって、民法719条2項
の幇助に当たるものというべきである。
 本件においても、Yの斡旋行為は、Dの不法行為を容易にするものであって、幇助に当た
るというべきである。
 Yの職歴や斡旋経緯等に照らすと、Yは、宅建業者に対して名目上の代表取締役を斡旋す
ることにより、当該宅建業者の違法な不動産取引を招来し、購入者の利益を害する危険性が
あることを認識していたと認められるから、上記幇助について、故意、少なくとも過失があ
ったというべきである。
 Yは、宅地建物取引に長年従事しており、宅建業を営む法人の代表取締役として、その周
囲に存在する適任者を紹介するのが自然であると考えられるにもかかわらず、その経緯等
に照らして宅建業者の代表取締役としての適性がおよそないと考えられるBを紹介してい
る上、その報酬も月々5万円であることは、報酬として不当に低額であり、Yの対応は不自
然かつ不合理なものといわざるを得ない。
(Xの損害の有無及び額について)
 Dの不法行為により、計260万円が詐取されたことが認められ、また弁護士費用は、審
理経過等から、26万円と認めるのが相当である。他方、慰謝料については、Xが上記財産
的損害の回復によってもなお慰藉されない精神的損害を被ったとは認められないから、Yが
Xに対して慰謝料の支払い義務を負うものということはできない。
3 まとめ
 原野商法を行った宅建業者に関係した者で、共同不法行為等により損害賠償請求が認容
された事例では、原野商法を行った会社の株主でかつ事務所の賃貸契約書上の連帯保証人
(東京地判 平30・10・4 消費者法ニュース119-306)や、原野商法を行った会社と業務提
携により商号使用を許諾し、実印等を預託した宅建業者(東京地判 平29・3・28 RETIO114-
112)等があります。
 また、原野商法を行った会社の違法行為を容易にしたとして専任宅地建物取引士への損
害賠償請求が認容された事例(東京高判 令元・7・2 消費者法ニュース 121-220)もありま
すので参考にしてください。