◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆
[ 駐車場契約と借地借家法]
マンション1階のビルトイン型駐車場について、貸主が駐車場契約を解除し借主に明渡しを求めた事案において、 当該駐車場は借地借家法の建物に該当する、 駐車場契約は居室と不可分一体の契約であるとした借主の主張を棄却し、貸主の請求を認めた事例(東京地裁 平成31年2月13日判決 ウエストロー・ジャパン)
1 事案の概要
賃借人Y(被告)は、平成21年4月、3階建てマンションの2階に入居した。
平成24年4月、本件マンション1階部分のビルトイン型駐車場に空きが出たため、Yは
これを月額1万円で借り受けた。
本件駐車場契約には、
(1) 借主は貸主に無断で契約車以外を置いてはならない(第5条)。
(2) 貸主、借主がいずれかの都合により本件駐車場契約を解除する場合、その1箇月前まで
に相手方に書面により通知し、期間満了と同時に借主は本件駐車場を明け渡し、貸主に立退料等を一切請求することができない(第 10条)旨が併せて約されていた。

平成30年2月に前所有者より本物件を購入して本件居室契約及び本件駐車場契約におけ
る貸主の地位を承継したX(原告)は、同年6月、Yに対し、7月20日限りで本件駐車場契約を解除する旨を通告した。
しかし、Yがこれに難色を示したことから、同年7月、Xは、Yが契約車の車両、バイク、自転車を無断駐車しているとして、本件駐車場契約違反等を理由に本件駐車場契約を催告解除する旨の意思表示し、その後、裁判所に、本件駐車場の明渡しを求めて訴訟を提起した。
Yは、
(1) バイク等を停めることは前の所有者も承諾していた。
(2) 本件駐車場は、借地借家法の適用を受ける「建物」に該当する 。
(3) 本件居室賃貸借契約と本件駐車場契約とは不可分一体の関係にあり、その一部の解約申
入れには正当事由を要するから本件解除は無効で ある、と主張した。
2 判決の要旨
裁判所は、次のように判示して、Xの請求を認容した。
(借地借家法の建物に該当するか)
本件駐車場は、屋根こそあるものの周壁を有しておらず、隣の駐車場と壁によって客観的に区別されているとはいえないし、本件建物の居住者であれば誰でも本件駐車場を通って本件建物を自由に出入りし得る状態にある以上、Yの独立的、排他的な支配が可能であるともいえない。そうすると、本件駐車場は、 本件建物の一部を構成するものではあるが、借地借家法の適用を受ける「建物」に該当するとはいえない。
(居室契約と不可分一体の関係にあるか)
(1) Yは、本件駐車場契約の締結前に本件居室契約のみを締結しており、当初の賃借目的物に駐車場は含まれていなかったこと、
(2)Yがその後に締結した本件駐車場契約は、その
賃料額や賃借期間は本件居室契約とは別個に定められ、その後の契約更新も本件居室契約とは別個に行われていたこと、
(3)本件建物の敷地内には屋根のない駐車場が複数あり、X
は、本件駐車場契約の解約申入れの際、Yに対し、本件駐車場の代替駐車場として屋根のない駐車場の利用が可能である旨併せて提案していたこと、
(4)Yは、本件駐車場の賃料増
額に常識的な範囲で応ずる意向を表明しているものの、その保有車両に強い愛着を示しており、Xの提案に係る屋根のない駐車場を利用することを拒否した等の事実が認められる。
以上の認定事実によれば、本件居室と本件駐車場の利用は可分なものであり、本件駐車場が利用できなければ本件居室における居住という本件居室契約の目的をおよそ達成することができないともいえないから、各契約が不可分一体の関係にあるとまではいえない。
本件建物のY以外の居住者において、賃貸借契約の更新の際に居室部分と駐車場部分とを1通の契約書により合意更新したことがあるとしても、2通の契約書を作成する手間を
省力化するための便宜的な措置にすぎないとも解され、上記判断を左右する事情ではない。
したがって、本件駐車場契約に借地借家法が準用又は類推適用されるものではない。
( 結論)
本件賃貸借契約10条所定の解除は、いわゆる中途解約権を定めたものと解されるところ、これに基づき行われた、XのYに対する本件駐車場の解約申入れが権利の濫用に該当するような事情もないことからXによる約定解除は有効であり、本件駐車場契約が終了し、その占有権原を喪失したYは、Xに対し、本件駐車場を明け渡す義務を負う。
3 まとめ
本事例は、本件マンションのビルトイン型駐車場について、イ)周壁もなく 独立的・排他的な支配が可能な状態ではないことから、 借地借家法の建物には該当せず、ロ)また居室契約と駐車場契約とは賃料も契約期間も別個に定められているなどの事情から、居室契約と不可分一体の関係にはなく、 駐車場契約のみの解約の場合に、借地借家法にいう正当事由は要しないと判断された事例です。
上記イ(借地借家法上の建物の概念)に関しては、「建物の一部であっても、障壁等によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借家法第1条にいう建物にあたる」とした判例(最判昭42.6.2)があり、本事例はこの基準には該当しないと判断されたものです。
上記ロ(居室契約との不可分一体性)に関しては、 「当該運動場(借地)が幼稚園経営観点から隣接する園舎敷地と不可分一体の関係にあるとしても、運動場としてのみ使用する合意があり、建物所有を目的とするものに当たらない」とした判例(最判平7.6.29)や、「店舗と共にその駐車場として賃貸された土地の賃貸借契約の 更新拒絶が権利の濫用に当たる」とした事例(福岡高判平27.8.27 /判例時報2274-29・RETIO102-124)などがあり具体的な契約目的や利用実態に基づく事案判断に委ねられることとなります。