[ 不法行為・差別的発言]
外国人借主に対し貸主媒介業者の「A国人には仲介しない」
して慰謝料が認められた事例(東京地判 令元・10・9 ウエストロー・ジャパン)
1 事案の概要
平成30年6月、借主X1(原告、学校法人)及び保証人X2(
者、A国人)は、専門学校の事務所として利用するため、
者)所有の建物を内見後、媒介業者Y2(被告、宅建業者)
た。
X1は契約締結日を7月末日とし、
欄に記名・押印し、Y2に送付するとともに、
同年8月、Y2はX1からの申入れを受け、
1の従業員に、代表者X2はB国人であるか尋ねたところ、
た。これは、
また、Y2は、X1が名刺を持たず、建物の合鍵が100本程度必
たが、これも入居予定者は15名程度という事前の説明と異なるも
Y2は、X1の従業員の不適切な対応及び誤った説明により、
せ、
X2の出身地域についての報告は誤っており、
X1に賃貸しない旨を告げた。更に、Y2は、
明し、受領した敷金及び管理費をX1に返還した。
X1は、賃貸借契約が成立しているにもかかわらず、
由に契約解除をすることは差別に当たるとして、
これに対して、Y2は、X1及びX2(X1ら)に、「(1)X1
明で不信感を持った。(2)従業員の合鍵100本が必要との発言
ルの可能性を感じた。(3)Y2は過去の取引でA国人と紛争とな
ことから、A国人には物件を仲介しないこととしていた。」
X1は、
為に当たるとして、250万円(X1の損害額497万円余の一部
2は、A国人であることを理由として不当な差別を受けたとして、
円(慰謝料200万円、弁護士費用50万円)
2 判決の要旨
裁判所は、次のとおり判示し、Xらの請求の一部を認容した。
(本件賃貸借契約が成立したか否か)
Y1は、X1らが賃借人欄又は連帯保証人欄に署名又は記名・
領しておらず、その賃貸人欄にも署名又は記名・
Y1がX1らに対し、
す事情も何ら認められない。
から、
よって、X1とY1の間で、
(Y2が賃貸借契約成立を拒んだ理由)
Y2は、
ており、X1らから「差別である」
であるとは認め難い。Y2は、
再三にわたり説明しているが、これは、
旨が差別ではないことを弁明するためであったと認められる。
をしない中核的な理由であったとはいえない。
(Y2の責任原因)
X1が極めて多数の関係者に合鍵をもたせることを予定していると
る物件の適切な使用に不安を残す事情であり、
しないこととする理由として、合理的なものというべきである。
しかし、回答書の説明内容は、客観的に見れば、
な扱いをする趣旨のものと捉えられてもやむを得ないものであって
著しく欠き、社会通念上、
(Y1の責任原因)
Y2が賃貸借契約の媒介をしないこととし、
言したことは、何ら違法なものではないから、
ったこともまた、
また、Y2がY1にX2がA国人であることを持ち出して、
言したような事情や、
(損害の内容及び金額)
Y2のX2に対する不法行為の内容等を総合的に勘案すると慰謝料
士費用の額は1万円と認めるのが相当である。
3 まとめ
本件判決では、媒介業者の「A国人には仲介しない」との発言は、
あるとの抗議に弁明するものであり、
ていますが、媒介業者の発言そのものは、客観的にみれば、
やむを得ないとして人格権の侵害による慰謝料請求を一部認めてい
関連案件では、
を毀損するものとして業者及び従業員に、50万円の損害賠償等の
(東京高判平15・7・16)があります。
外国人と取引を行う事業者にあっては、
を侵害するような差別的な言動は不法行為による損害賠償請求の対
ことに十分な注意を払う必要があります。