◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆

土地区画整理事業における賦課金を課せられた買主等が求めた分譲業者に対する損害賠

償請求が棄却された事例

 

 土地区画整理事業地内の土地を敷地とするマンションの買主等が、同事業における賦課

金を課されたため、分譲業者に対し瑕疵担保責任又は説明義務違反の不法行為責任によ

損害賠償を求めた事案において、分譲時に賦課金が課される可能性が具体性を帯びていた

といえないことから、瑕疵担保責任・不法行為責任いずれとも理由がないとして、請求が

棄却された事例(東京地裁 平成26311日判決 棄却ウエストロー・ジャパン)

 

1 事案の概要

デベロッパーである売主Y(被告)は土地区画整理組合(以下「本件組合」という。)が

施行する土地区画整理事業地内の土地を敷地としてマンションを建築し、平成9年から10

年にかけて、X(原告。以下、Yから購入した者から売買・相続で取得した者も含め「X

ら」という。)に分譲した。

土地区画整理事業は、当初の事業計画では、施行期間は平成53月末日まで、対象面

積約38万m2、うち保留地予定面積は434302事業費総額81億円余はすべて保留地

処分金で賄うこととされていた。

 平成38月の第1回目の事業計画の変更では、保留地単価は12当たり18万円余か

44万円余に、事業費総額も148億円余に引き上げられたが、すべて保留地処分金で賄う

ことに変更はなく、平成83月の第2回変更事業計画でも施行期間は延長されたが、事

業費総額148億円余のほぼ全額を保留地処分金で賄うことには変更はなかった。

 平成93月、土地区画整理事業にデベロッパーとして参加していたA(訴外)は、本

件組合に対し、保留地8000坪を148億円で買い受ける旨の基本契約の解約を申入れ、平成

1012月ころ、Aと本件組合は基本契約を解消するに当たり、Aが和解金額20億円を支

払うことで合意した。

 平成133月、変更の第3回事業計画では収入20億円余が発生したため、事業費総額

のうち保留地処分金で賄う額が128億円余とされたが、賦課金の計上はされなかった。

平成143月、変更の第4回事業計画では、総事業費を約130億円に、保留地処分金も80

億円に引き下げ、それ以後も事業計画の変更を行ったが、借入金利息の支払等が困難とな

り、平成227月、裁判所に特定調停の申立てを行い、平成233月、債権者に対し平

28331日までに40億円を分割償還する内容の合意が成立した。

 平成234月開催の第8回総会では、本件組合は、事業費不足額を約31億円と見積り、

再減歩方式による再建計画を採択したが、翌年3月開催の第9回総会では、特定調停で定

められた時間的制約の中で組合再建を達成するため、再減歩方式に代えて、31億円分の賦

課金を導入する決議をし、平成24105日付け賦課金額決定通知書により、本件組合

は、Xらに対し、賦課金を請求した。

 Xらは、Yには瑕疵担保責任又は売買契約締結時の説明義務違反の不法行為責任がある

として提訴した。

 

2 判決の要旨

裁判所は、次のように判示してXの請求をすべて棄却した。

 土地区画整理組合は、法律上、その事業に要する経費に充てるため、組合員に対し、賦

課金を賦課徴収することができるとされており、施行地区内の土地所有者は、すべて組合

員となるため、本件敷地の所有者に賦課金が課される一般的・抽象的可能性は常に存在し

ていたものということができる。しかし、分譲時における本件敷地に瑕疵があったという

ことができるためには、このような抽象的・一般的可能性では足りず、分譲時に、組合員

である本件敷地の所有者に賦課金が課されることが具体的に予定されていたことが必要と

解される(最二判 平25322 平23(受)1490号)。

 Xらは、分譲時、本件敷地については賦課金が発生する具体的な可能性があった旨主

するが、Aの撤退決定後である平成133月の本件組合の第3変更事業計画においても、

事業費総額のほとんどを保留地処分金により賄う方針を変更しておらず、組合員の負担を

求めることが具体的に総会の決議事項として取り上げられたのは、平成234月の第8

総会が最初であり、翌年の第9回総会において、本件賦課金の徴収に係る本件決議がされ

たのであり、分譲時に、本件敷地の所有者に賦課金が課される可能性が具体性を帯びてい

たということはできないから、分譲時、本件区分建物に瑕疵があったということはできず、

その余の点を判断するまでもなく、瑕疵担保責任に基づくXらの請求は理由がない。

 Xらが主張するYの説明義務違反による不法行為についても、分譲時、賦課金が課され

る可能性が具体性を帯びていたとは認められない以上、Yの信義則上の説明義務は、その

前提を欠くものであり、その余の点について判断するまでもなく、説明義務違反の不法行

為に基づく請求も理由がない。

 

3 まとめ

 宅建業法の解釈・運用の考え方の第35条第1項関係の「土地区画整理法第110条の規

定による精算金に関する説明について」では、換地処分後の清算金に関して重要事項説明

書に記載・説明することとされている。

 賦課金に関しての明文規定は見られないが、計画した事業費の確保が困難な土地区画整

理事業も少なからず見受けられ、施行地区内で土地・戸建を取得後、100万円以上の賦課金

支払を求められる場合もあり、説明がなかった場合に購入者が納得されないのも当然と言

えよう。

本件では購入者等の請求が棄却されているが、瑕疵の有無の判断基準は、最二判の平成

25.3.22判決「瑕疵があったということができるためには、抽象的・一般的可能性では足り

ず、本件分譲時に、組合員である本件敷地の所有者に賦課金が課されることが具体的に

定されていたことが必要と解される」とされている。

宅建業者は、施行地区内の不動産取引に関わる際、総会で賦課金の請求案が俎上にあがっ

ていたり、再減歩が行われているような場合は、土地区画整理組合に確認し、確認日・確

認内容を重説に記載し、買主等に説明しておくことが必要と言えよう。