明渡しの法的手続
占有移転禁止仮処分
賃借人の賃料不払いを理由として貸室明渡しの訴訟を起こした場合、明け渡せという判決をもらっても、その判決によって明渡しの強制執行ができるのは、賃借人とその家族(配偶者や子)に対してだけです。
そうすると、明渡しを求める訴訟をしている間に、第三者が貸室に入り込んでしまった場合、賃借人に対してアパートの明渡しを命じる判決が出ても、その第三者に対しては明渡しの強制執行ができず、さらに、その第三者を相手方にして、明渡しの訴訟を起こさなければならないということになってしまいます。
このようなことにならないために、将来、アパートに第三者が居住する恐れがあるという場合は、占有移転禁止仮処分という手続を取った上で、アパートの明渡しを求める訴訟をします(その恐れがあまりない場合は、いきなり訴訟をします)。
具体的な手続ですが、賃貸人代理人である弁護士が、裁判所に占有移転禁止仮処分を申立てると、保証金を賃貸人に積ませた上で(この保証金は将来返ってきます)裁判官が仮処分決定を出します。
仮処分決定が出ると、次に、この決定をもとにして、仮処分の執行をします。具体的には、弁護士が、仮処分決定書を裁判所の執行官に提出し、執行官と弁護士が賃借人の貸室に行きます。そして、貸室に入り、貸室の壁に、「今後、賃借人は第三者に占有を移転してはならない」という趣旨のことを書いた『公示書』を貼ります。
この公示書があると、将来、アパートに第三者が入り込んでも、その第三者に対して、さらに訴訟をする必要がなくなるのです。
ア | 賃借人に対して、建物明渡しと未払い賃料の支払いを求める訴訟を起こします(連帯保証人がいる場合は、連帯保証人も被告にし、未払い賃料の支払いを求めます)。 |
イ | 予想される展開 |
a | 裁判所の第1回期日に賃借人が出てこない場合 |
b | 第1回期日に賃借人が出てきた場合 |
ウ | 和解調書、判決に執行力あり。 |
和解調書、判決などによって、明渡しの強制執行をすることができます
まず、地方裁判所の執行官に対して、明渡しの強制執行申立をします。
その後、執行官が現場に行って、賃料不払いをしている賃借人に対し、明け渡すよう催告し、それでも明渡しをしない場合は、執行官立会いのもとに明渡しの強制執行を行います。
強制執行では、何人かの人夫(執行補助者といいます)を使い、家財道具などの運び出しを強制的に行い、鍵も変えてしまいます。
ただ、執行補助者の日当、トラック代、ダンボール箱代、賃借人の家財道具などの捨て代、などは賃貸人の負担になり、部屋の広さなどにもよりますが、通常のアパートの場合、30〜40万円前後の費用がかかります。
賃料不払いによる建物明渡し事件は、賃貸人がほとんど100%勝訴します。訴訟も、1〜2回位で審理が終わり、次に判決になります。
一般的に言うと、賃料不払いを理由にしてアパートの明渡しを求める場合は、弁護士に相談してから、最終的に、和解あるいは強制執行によって、建物明渡しが終了するまで、4〜5ヶ月程度です。
話し合いが成立した場合
即決和解をするのであれば、即決和解手続を依頼するのが通常です。
話し合いが成立しない場合
占有移転禁止仮処分をするのであれば、
■ 占有移転禁止仮処分、
■ 明渡し訴訟、
■ 明渡しの強制執行、
を依頼し、
占有移転禁止仮処分をしないのであれば、
■ 明渡し訴訟、
■ 明渡しの強制執行を依頼します。
弁護士に相談する場合
| まず、法律相談の予約をします。 |
| 法律相談のときには、下記の書類をご持参いただくとご相談がスムースに進みます。 ・ 建物登記簿謄本 ・ 建物固定資産評価証明 ・ 賃貸借契約書 ・ 連帯保証人承諾書(賃貸借契約書欄に記載があれば不要です) ・ 家賃の支払状況がわかる資料(通帳の写し、管理会社の管理表) ・ 会社が賃貸人となっている場合は会社の法人登記簿謄本
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